
EMUへの道筋: ドロール報告書とは?
1989年4月、欧州共同体(EC)の首脳会議にて、ジャック・ドロール氏の名を冠した「ドロール報告書」が承認されました。当時、欧州委員会の委員長を務めていたドロール氏の名前を取って、この報告書は名付けられました。この報告書は、欧州経済通貨統合(EMU)という壮大な構想を実現するために、具体的な手順を初めて示したという点で、歴史的な意義を持つものでした。
ドロール報告書は、EMUという目標を達成するために、三つの段階を踏むことを提唱しました。第一段階として、加盟各国間の為替レートの変動幅を一定の範囲内に収めること、第二段階として、欧州中央銀行を設立し、共通の金融政策を実施すること、そして最終段階として、単一通貨を導入し、完全な経済通貨統合を実現することを目指しました。
この報告書が発表された当時、EC加盟各国は経済状況や通貨制度に大きな違いがありました。しかし、ドロール報告書は、EMUという共通の目標に向けて、加盟各国が足並みを揃えて進むための道筋を示したのです。その後の欧州統合の進展、特に単一通貨ユーロの導入は、ドロール報告書が提示した構想に基づいて実現されたものであり、その影響力の大きさを物語っています。