金融機関を守る仕組み: TLACとは?

金融機関を守る仕組み: TLACとは?

暗号通貨を知りたい

先生、『TLAC』って言葉が出てきたんだけど、これってどんなものですか?

暗号通貨研究家

TLACは、『損失吸収力のある資本』って呼ばれるものなんだ。簡単に言うと、銀行が倒れそうになったときに、税金を使わずに、自分たちのお金で復活できるようにするための仕組みだよ。

暗号通貨を知りたい

税金を使わずに自分たちのお金で復活…?具体的にどういうことですか?

暗号通貨研究家

銀行は普段からお預かりしているお金とは別に、いざという時のために、特別な資金を積み立てておくように義務付けられるんだ。もし銀行が倒れそうになったら、その特別な資金を使って、自分たちで復活を目指すんだよ。そうすれば、国民の税金を使わずに済むよね。

TLACとは。

金融の安定を守るための国際的な組織である金融安定理事会は、2019年1月から、世界的に重要な金融機関、つまり簡単に言えば世界経済に大きな影響力を持つ銀行に対して、新しい資本規制を導入することを計画しています。この規制はTLACと呼ばれ、銀行が自分のお金で損失をカバーできる力をもっと強くすることが目的です。

具体的には、銀行は、今までの自己資本に加えて、特別な債券や預金などを一定量以上、持っていなければなりません。これらの特別な債券や預金は、銀行が倒産しそうになった時に、元本を減らしたり、返済を免除したり、株式に変えたりすることができます。こうすることで、銀行は国のお金を使わずに、自分たちのお金で損失を補填し、経営を立て直すことができるようになります。

TLACの概要

TLACの概要

– TLACの概要TLACとは、「総損失吸収力」を意味する言葉で、金融機関が万が一経営危機に陥った場合でも、公的資金の注入に頼ることなく、自力で経営を立て直せるようにするための仕組みです。世界規模で金融危機が起きることを防ぐために、国際的な金融規制の枠組みとして、金融安定理事会(FSB)が導入を決定しました。

TLACの仕組みは、金融機関が発行する債券や株式などの資本の一部をあらかじめ定められた比率で保有することを義務付けるものです。金融機関が経営危機に陥った場合には、これらの資本が損失を吸収することで、金融システム全体への影響を最小限に抑えることができます。

TLACの導入は、金融機関にとって、より安全な経営を求められることを意味します。自己資本を増強するなど、経営の健全性を高める努力が求められます。一方で、金融システム全体の安定性が高まることで、預金者や投資家など、金融機関を利用する人々にとっても、より安心して金融サービスを利用できるようになることが期待されます。

項目 内容
TLACの意味 総損失吸収力 (Total Loss-Absorbing Capacity)
金融機関が経営危機に陥っても、公的資金に頼らず自力で経営を立て直すための仕組み
導入の目的 世界規模の金融危機を防ぐ
導入を決めた機関 金融安定理事会 (FSB)
仕組み 金融機関は、債券や株式などの資本の一部をあらかじめ定められた比率で保有することを義務付けられる。
経営危機時に、これらの資本で損失を吸収し、金融システム全体への影響を最小限に抑える。
金融機関への影響 自己資本増強など、経営の健全性を高める努力が求められる。
金融機関利用者への影響 金融システム全体の安定性が高まり、より安心して金融サービスを利用できるようになる。

自己資本規制との違い

自己資本規制との違い

– 自己資本規制との違いとは?金融機関は、私たち預金者から預かったお金を企業への融資などに活用することで、経済活動を支えています。しかし、融資が焦げ付いてしまったり、投資がうまくいかなかったりすると、金融機関自身が損失を被ることになります。もし、その損失が大きく、金融機関の持つ自己資本を上回ってしまうと、預金者への支払いが滞ってしまうなどの深刻な事態に陥る可能性があります。このような事態を防ぎ、金融システムの安定を図るため、金融機関に対しては、一定以上の自己資本を保有することが義務付けられています。これが従来の自己資本規制です。自己資本規制は、預金者などのお金を預かる金融機関にとって、健全性を保ち、信頼を維持するために非常に重要です。しかし、世界金融危機のような大きな出来事が起こると、従来の自己資本規制だけでは十分ではないということが明らかになりました。想定外の事態が起きても、金融機関が十分な支払い能力を維持し、金融システム全体が不安定にならないようにするためには、従来の自己資本規制よりもさらに踏み込んだ対策が必要となったのです。そこで、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)と金融安定理事会(FSB)によって構成される金融安定委員会(FSB)は、TLAC(Total Loss-absorbing Capacity、総損失吸収力)という新たな規制を導入しました。TLACは、従来の自己資本規制に加えて、より損失吸収能力の高い資本や負債を一定割合以上保有することを金融機関に求めるものです。具体的には、自己資本に加えて、破綻処理の際に元本削減や債務の株式化などによって損失を吸収できる特定の債務証券なども含めることで、金融機関の損失吸収能力を強化することを目指しています。

項目 内容
従来の自己資本規制
  • 金融機関が一定以上の自己資本を保有することを義務付ける規制
  • 預金者保護、金融システムの安定化を目的とする
TLAC(総損失吸収力)
  • 世界金融危機のような事態を受け、従来の規制よりもさらに踏み込んだ対策として導入
  • 自己資本に加え、特定の債務証券なども含め、金融機関の損失吸収能力を強化

TLACの対象となる金融機関

TLACの対象となる金融機関

金融安定理事会(FSB)が定める「グローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)」は、世界経済に及ぼす影響が大きいと判断された国際的に活動する金融機関です。これらの機関は、その規模や業務の複雑さ、国際的な相互接続性から、仮に経営危機に陥った場合、世界経済に深刻な影響を与える可能性があります。このような事態を避けるために、G-SIFIsには、より厳格な規制の枠組みである「総損失吸収力(TLAC)規制」が適用されます。

TLAC規制の対象となるのは、具体的には、国際的な金融グループを形成する銀行、証券会社、保険会社などです。これらの金融機関は、自己資本比率規制に加えて、TLAC規制に基づき、一定水準以上の損失吸収力を持つことを義務付けられます。損失吸収力とは、経営危機に陥った際に、預金者や納税者ではなく、株主や債権者など、金融機関自身のリスク負担能力が高い主体によって損失を負担する能力のことです。日本国内では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループといったメガバンクがG-SIFIsに該当し、TLAC規制の対象となります。これらの金融機関は、TLAC規制への対応として、資本増強や、損失吸収力を持つ債券の発行などを進めています。

項目 内容
G-SIFIsとは 世界経済に大きな影響力を持つ国際金融機関。規模、業務の複雑さ、国際的な相互接続性から、経営危機時の影響が甚大となる可能性がある。
TLAC規制の対象 国際的な金融グループを形成する銀行、証券会社、保険会社など。
TLAC規制の内容 自己資本比率規制に加えて、一定水準以上の損失吸収力を持つことを義務付ける規制。
損失吸収力とは 経営危機時に、預金者や納税者ではなく、株主や債権者など、金融機関自身のリスク負担能力が高い主体によって損失を負担する能力。
日本国内のG-SIFIs例 三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループといったメガバンク。
日本国内のG-SIFIsの対応 資本増強や、損失吸収力を持つ債券の発行など。

TLACで求められる資本と負債

TLACで求められる資本と負債

金融機関などが破綻した際に、公的資金の投入による負担を国民に強いることがないように、国際的に合意された「損失吸収力に関する要件」のことをTLAC(Total Loss-Absorbing Capacity)といいます。
TLACでは、国際的に活動する金融機関などを対象に、万が一経営危機に陥った場合でも、自力で損失を吸収し、業務を継続できるだけの資本と負債を一定割合以上保有することを求められます。
具体的には、TLAC対象機関は、債権カットや株式転換などによって資本を増強できる仕組みを持った債券や、預金保険の対象外となる預金などを発行し、保有する必要があります。これらの資本と負債は、金融機関が経営危機に陥った際に、損失を吸収する役割を果たします。
例えば、債権者が元本の削減や免除に応じることができる仕組みを持った債券を発行することで、金融機関は、経営危機時に債務を削減し、資本を増強することができます。また、預金保険の対象外となる預金を発行することで、預金者に損失を負担してもらう代わりに、金融機関は預金払い戻しの義務を免れ、資金繰りを安定させることができます。
このように、TLACは、金融機関の自己責任による経営を促し、金融システムの安定性を維持するために重要な役割を果たします。

項目 内容
TLACの目的 金融機関などが破綻した際に、公的資金の投入による負担を国民に強いることを防ぐため。国際的に合意された「損失吸収力に関する要件」のこと。
TLACの対象 国際的に活動する金融機関など
TLACの内容 万が一経営危機に陥った場合でも、
– 自力で損失を吸収し
– 業務を継続できるだけの資本と負債を一定割合以上保有すること
TLACの具体的な方法 – 債権カットや株式転換などによって資本を増強できる仕組みを持った債券の発行
– 預金保険の対象外となる預金の発行
TLACの意義 – 金融機関の自己責任による経営を促進
– 金融システムの安定性を維持

TLACの目的と効果

TLACの目的と効果

– TLACの目的と効果金融システムは、私たちの経済活動の根幹を支える重要なインフラです。その安定を脅かす金融機関の破綻は、経済全体に計り知れない損失をもたらす可能性があります。そこで、金融機関の破綻リスクを軽減し、金融システムの安定を図るために導入されたのがTLAC(総損失吸収力)です。TLACは、簡単に言うと、金融機関が自ら負担すべき損失吸収力のことを指します。具体的には、銀行は、預金保険の対象とならない債券や株式などの資本を一定以上積み立てることが義務付けられています。もしも、その銀行が経営危機に陥った場合、これらの資本が損失を吸収することで、預金者や納税者への負担を軽減することができます。TLACには、大きく分けて2つの効果が期待できます。一つ目は、金融機関の経営責任を明確化し、健全な経営を促す効果です。自己資本比率を高めることは、銀行にとって容易ではありません。そのため、銀行は、リスク管理を徹底し、健全な経営を維持しようと努めるインセンティブが働くようになります。二つ目は、万が一、金融機関が破綻した場合でも、その影響を最小限に抑える効果です。十分な損失吸収力を備えていれば、破綻処理が円滑に進み、金融システムへの影響を最小限に抑えることができます。TLACは、金融システムの安定のために非常に重要な役割を担っています。金融機関は、TLACの要件を満たすために、積極的に資本増強やリスク管理に取り組む必要があり、その取り組みが、私たちの経済活動の安定に繋がっていくのです。

項目 内容
TLACの定義 金融機関が自ら負担すべき損失吸収力のこと
TLACの目的 金融機関の破綻リスクを軽減し、金融システムの安定を図る
TLACの内容 銀行は、預金保険の対象とならない債券や株式などの資本を一定以上積み立てることが義務付けられている
TLACの効果1 金融機関の経営責任を明確化し、健全な経営を促す効果

  • 自己資本比率を高めることを促す
  • リスク管理を徹底するインセンティブが働く
TLACの効果2 万が一、金融機関が破綻した場合でも、その影響を最小限に抑える効果

  • 破綻処理を円滑に進める
  • 金融システムへの影響を最小限に抑える
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