モラトリアム法とは？

モラトリアム法とは？

背景

2008年のリーマンショックは、世界中に経済的な嵐を巻き起こし、日本もその影響を大きく受けました。多くの企業が、まるで荒波に揉まれる船のように、資金繰りに苦しみ始めました。特に、体力のない中小・零細企業は、事業を続けることさえ危ぶまれる状況に追い込まれていきました。

このような状況を打破し、日本経済を再び力強く成長させるために、国は様々な対策を打ち出す必要がありました。企業の倒産を防ぎ、そこで働く人々の雇用を守ることが何よりも重要だったのです。そのための対策の一つとして、資金繰りに苦しむ企業に対して、金融機関がお金を貸しやすくするための法律が作られました。それがモラトリアム法です。この法律によって、多くの企業が息を吹き返し、再び事業を継続することができるようになったのです。

概要

– 事業を継続するための救済措置2009年12月に施行された「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」、通称モラトリアム法は、資金繰りに苦しむ中小企業を支援するための法律です。世界的な経済状況の悪化を受け、多くの企業が経営難に陥る中、この法律は、中小企業が金融機関に対して、返済条件の見直しを要請できる権利を保障しました。具体的には、返済期限の延長や返済額の減額、または金利の減免などを金融機関に求めることができます。この法律は、あくまでも金融機関に対して努力義務を課すものであり、金融機関側に強制力はありません。しかし、国が積極的に中小企業を支援する姿勢を示したことで、多くの金融機関が柔軟な対応を取り、多くの企業が事業継続の機会を得ることができました。モラトリアム法は時限立法であり、2010年12月末にその効力を失いました。しかし、その後の景気対策においても、金融機関による資金繰り支援の重要性は広く認識されており、モラトリアム法は、その先駆けとなる重要な役割を果たしました。

経営改善計画の策定

企業が厳しい経営状況に陥り、金融機関からの融資の返済が困難になった場合、リスケジュール（返済猶予）という手段があります。これは、企業が再び健全な状態に回復するための期間を設けるという意味で、重要な救済措置となります。
モラトリアム法では、このリスケジュールを受けるために、企業は経営改善計画の策定と提出を義務付けられていました。この計画は、企業の現状を冷静に分析し、将来のビジョンを示すものでなくてはなりません。具体的には、どのような問題点があり、なぜ業績が悪化しているのかを明らかにし、その上で、どのような事業をどのように展開していくのか、具体的な計画を提示する必要があります。そして、計画を実現するために、人員削減やコスト削減など、具体的な経営改善策を盛り込む必要があります。
金融機関は、提出された経営改善計画の内容を審査し、その実現可能性や効果を評価した上で、リスケジュールに応じるかどうかを判断します。つまり、モラトリアム法は、単に返済を先延ばしにするのではなく、企業に対して、計画的な経営改善を促すことを目的としていました。この法律によって、多くの企業が経営の立て直しを迫られ、その後の成長へと繋げていきました。

効果と影響

モラトリアム法は、企業の資金繰りを支援するための制度として導入され、多くの企業が支払いの猶予を受けられるようになりました。
これは、経済活動の停滞によって収入が減少し、資金繰りが苦しくなった企業にとって、
事業継続のための貴重な時間を稼ぐことを可能にしました。

事実、モラトリアム法が施行された期間中には、多くの企業が倒産を免れたというデータも存在します。
しかし、その一方で、モラトリアム法によって問題の根本的な解決が先延ばしになってしまったという側面も否定できません。

モラトリアム法の適用を受けた企業の中には、
この制度に頼るあまり、事業の見直しや経営の効率化といった、
抜本的な改革を怠ってしまったケースも見受けられます。
その結果、モラトリアム期間の終了後も経営が立ち直らず、
倒産に追い込まれてしまう企業も出てきました。

また、モラトリアム法は、
金融機関にも大きな影響を与えました。
企業への貸付金が回収できないリスクを抱え、
収益の悪化も懸念されました。
モラトリアム法は、経済危機という困難な状況下において、
企業を救済する一定の効果を発揮しました。
しかし同時に、新たな問題を生み出す側面もあったと言えるでしょう。