公共サービスの落とし穴：クリームスキミングとは？

公共サービスの落とし穴：クリームスキミングとは？

規制緩和と新規参入

近年、これまで国や地方公共団体など限られた主体によって提供されてきた、電気、ガス、水道、通信、鉄道、航空、医療、教育といった、国民生活に欠かせないサービスを提供する分野において、規制が緩和され、新規事業者の参入が促進されています。これは、事業者間の競争を促し、サービスの質や効率性を向上させることで、利用者である国民により質の高いサービスを、より低廉な価格で提供することを目的としています。

しかし、規制緩和によって期待される効果ばかりではなく、注意すべき側面も存在します。その一つが「クリームスキミング」と呼ばれる現象です。これは、新規参入者が、既存事業者と比較して、採算が見込みやすく、収益を上げやすい分野や顧客層にのみサービスを提供し、採算が合わない分野や顧客層にはサービスを提供しないことを指します。例えば、都市部や人口密集地などの収益が見込める地域にのみサービスを提供し、地方や過疎地など採算が見込めない地域にはサービスを提供しないといったケースが挙げられます。

クリームスキミングは、規制緩和によって新規参入と競争が促進される一方で、サービスの地域間格差や顧客層による格差を拡大させる可能性があるという点で、注意が必要です。規制緩和を進めるには、このような負の側面にも目を向け、適切な対策を講じる必要があります。

収益性が高い分野に集中

「クリームスキミング」という言葉を耳にしたことはありますか？これは、新しい事業者が、誰もが利用できるサービスの中でも、特に利益を上げやすい分野だけに狙いを絞って参入することを指します。

例を挙げると、多くの人が住んでいて利用者が見込める都市部や、採算が合わせやすい人口密集地などにサービスを集中させます。逆に、採算が合わない地方や過疎地、運営に費用がかかりすぎるサービスなどは、提供を見送ってしまう可能性があります。

このような事態は、利便性の高い都市部に住む人と、そうでない地域に住む人の間に、サービス格差を生み出す可能性があります。

誰もが平等にサービスを受けられるようにするためには、行政による適切な規制や支援が必要となるでしょう。

不平等が生じる可能性

– 不平等が生じる可能性「クリームスキミング」は、収益を追求するあまり、地域やサービス利用者間で格差を生み出す可能性を孕んでいます。 サービスを提供する側は、より多くの利益を得られる層や地域に集中しがちです。例えば、人口が多く需要が見込める都市部や、費用対効果の高いサービスを必要とする層には、多くの事業者が参入し、質の高いサービスが提供されるでしょう。一方で、採算が取りにくい地方や過疎地、あるいは特別な支援が必要で費用がかさむサービスなどは、後回しにされたり、提供が縮小されたりする可能性があります。その結果、都市部と地方ではサービスの質や量に差が生じ、地方に住む人々は、必要なサービスを受けにくくなる可能性があります。また、同じ地域内でも、支援が必要な人々は、そうでない人と比べて、サービスを受けられる機会が制限される可能性も懸念されます。 利潤を重視するあまり、本当に支援を必要とする人々へのサービスがおろそかになることは、社会全体の公平性の観点からも大きな問題と言えるでしょう。

必要な対策

公共サービスの質を維持していくためには、利益だけを追求する行動、いわゆる「クリームスキミング」への対策が欠かせません。クリームスキミングによって質の低いサービス提供体制しか構築できなければ、国民生活に大きな支障が出てしまう可能性もあるからです。

そこで、新規参入を希望する事業者に対して、収益性が低い分野においても一定水準のサービス提供を義務付けることが考えられます。具体的には、採算の取りにくい地域や利用者の少ない時間帯でも、サービスを提供し続けることを求めるのです。

このような負担を軽減するために、行政は新規参入する事業者に対して補助金などの経済的な支援を行うことも検討する必要があります。さらに、既存の事業者と新規参入する事業者間で、それぞれの役割分担や連携を促進することも重要です。

官民が協力して多角的な対策を講じることで、クリームスキミングを抑制し、質の高い公共サービスを維持していくことが期待できます。

公平なサービス提供

公共サービスの提供において、規制緩和は、競争を促進し、より質の高いサービスを国民に届けるという観点から、有効な手段となりえます。規制緩和によって、新規参入が促進され、多様な事業者がサービスを提供することで、利用者は自分に合ったサービスを、より低価格で利用できる可能性が広がります。
しかし、規制緩和には、「良いとこ取り」や「クリームスキミング」といった問題点も孕んでいることを忘れてはなりません。これは、収益性の高い一部の地域や利用者にサービスが偏り、採算の取りにくい地域や利用者へのサービス提供が疎かになってしまう可能性を意味します。
国民全体にとって公平で質の高い公共サービスを維持していくためには、規制緩和による効果とリスクを慎重に見極める必要があります。そのためには、規制緩和によって実際にどのような影響が生じているのか、客観的なデータに基づいた分析を行い、必要に応じて、サービスの質の確保や利用者保護のための対策を講じなければなりません。規制緩和はあくまでも手段の一つであり、国民生活の向上という目的を達成するために、慎重かつ計画的に進めていくことが重要です。