欧州自由貿易連合：EFTAってなに？

欧州自由貿易連合：EFTAってなに？

欧州自由貿易連合誕生の背景

1957年、ヨーロッパで大きな変化が訪れました。フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの6ヶ国が手を組み、経済成長を加速させるために欧州経済共同体（EEC）を設立したのです。この組織は、後に欧州連合（EU）へと発展し、ヨーロッパ統合の礎となります。しかし、すべてのヨーロッパの国々がこの流れに乗ったわけではありませんでした。イギリス、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、スイスの7ヶ国は、EECへの加盟を見送り、独自の経済圏を築く道を選びました。

これらの国々は、様々な理由からEECへの加盟を見送りました。例えば、イギリスは、当時、世界中に広がるイギリス連邦との関係を重視しており、EECへの加盟によってその関係が損なわれることを懸念していました。また、デンマークやノルウェーは、自国の農業保護政策とEECの共通農業政策との間に整合性がないことを懸念材料としていました。こうして、EECとは異なる道を歩むことを決めた7ヶ国は、1960年、欧州自由貿易連合（EFTA）を設立しました。EFTAは、加盟国間の貿易障壁を削減し、経済協力を促進することを目的としていましたが、EECのような政治的な統合を目指した組織ではありませんでした。

自由貿易の推進

– 自由貿易の推進

ヨーロッパ自由貿易連合（EFTA）は、加盟国間の経済的な結びつきを強化し、互いの発展を促すことを目指して設立されました。その中核をなす理念が、まさに「自由貿易の推進」です。

EFTAは、加盟国間でモノやサービスが国境を越えて活発に行き交うことによる経済活性化を期待し、具体的な取り組みとして、まず工業製品に関わる関税を段階的に引き下げ、最終的には撤廃しました。関税は、輸入品に対して課される税金であり、これが高額であるほど輸入品の価格が上昇し、国内産業が保護されます。しかし、同時に国内企業の競争意欲が低下し、消費者にとっても選択肢が狭まり、価格が上昇する可能性も孕んでいます。そこでEFTAは、関税撤廃によって加盟国間の貿易を促進し、企業間の競争を促すことで、より質の高い製品やサービスがより低価格で提供される環境を目指したのです。

さらに、EFTAは貿易手続きの簡素化にも取り組みました。複雑で時間のかかる手続きは、企業にとって大きな負担となり、貿易の妨げとなります。そこで、EFTAは加盟国間での共通ルールを策定し、手続きを可能な限り簡素化することで、貿易の円滑化を図りました。

これらの取り組みによって、加盟国はより自由な環境下で経済活動を展開することが可能となり、消費者にとっても、より多くの選択肢から商品やサービスを選べるようになりました。結果として、EFTAは加盟国の経済成長と発展に大きく貢献してきたと言えるでしょう。

独自の道を歩む

– 独自の道を歩むヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)は、ヨーロッパ経済共同体(EEC)とは異なる道を歩みました。 EECが加盟国間の政治的な統合を目指していたのに対し、EFTAはあくまでも経済的な協力関係の構築に焦点を当てていました。 具体的には、加盟国は独自の経済政策や貿易政策を維持し、共通の関税を設定することもありませんでした。これは、EFTA加盟国がそれぞれの国の主権を重視していたためです。EECが共通市場の創設を通じて加盟国間の経済的な結びつきを強めていった一方で、EFTAはより緩やかな協力関係を維持しました。 EFTAの加盟国は、自由貿易による経済的な利益を享受しながらも、自国の政治や経済に関する決定権を保持することを望んでいました。 このようなEFTAの姿勢は、加盟国の間で共通の利益が一致している分野においては有効に機能しました。しかし、より緊密な経済統合や政治的な協調が必要とされる状況においては、EFTAはEECのような影響力を持つことができませんでした。

変化と発展

時代が流れゆく中で、ヨーロッパ自由貿易連合（EFTA）を構成する国々にも変化が見られました。イギリス、デンマーク、ポルトガルは、後にヨーロッパ経済共同体（EEC）に加盟するため、EFTAを離脱しました。これは、EECが加盟国により多くの経済的・政治的な統合を求めていたため、EFTAよりも魅力的に映ったためと考えられます。一方で、EFTAの理念に共感し、自由貿易の推進を重視する国々が新たに加盟しました。 アイスランド、フィンランド、リヒテンシュタインは、EFTAの理念と、加盟による経済的なメリットを期待し、新たに加盟しました。 これらの国の加盟は、EFTAの活動の幅を広げ、国際的な存在感を高めることに貢献しました。現在、EFTAはアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスの4カ国で構成されています。これらの国は、自由貿易の原則に基づき、経済的な結びつきを強めながら、独自の道を歩んでいます。

現代におけるEFTAの役割

ヨーロッパ自由貿易連合（EFTA）は、1960年に設立された、ヨーロッパにおける自由貿易の促進を目的とする国際機関です。かつてはイギリスやスウェーデンなど多くの国が加盟していましたが、その後多くの国がヨーロッパ共同体（EC、現在のEU）に加盟したため、現在ではスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインの4カ国のみが加盟しています。

EFTAは小規模な組織ですが、現代のヨーロッパ経済においても重要な役割を担っています。特に、EUとの間で緊密な関係を築いており、様々な分野で協力体制を築いています。その中でも最も重要な協力の柱となっているのが、1994年に発効したEUとの自由貿易協定（FTA）です。この協定により、EFTA加盟国は工業製品においてEU単一市場へのアクセスが可能となり、活発な貿易を行っています。また、EFTA加盟国の一部は、EU単一市場への参加をより深化させる枠組みである欧州経済領域（EEA）にも加盟しています。EEAへの加盟により、EFTA加盟国はEUの単一市場に関する規則を受け入れる必要が生じますが、その一方で「人の移動の自由」の恩恵を受けることができます。これは、EFTA加盟国の国民がEU域内で自由に居住、就労、就学することを可能にするものであり、人材の流動化を通じて経済活性化に貢献しています。このように、EFTAはEUと緊密な協力関係を築きながら、ヨーロッパ経済における独自の地位を確立しています。