CFIUS：外国投資を国家安全保障の観点から審査

CFIUS：外国投資を国家安全保障の観点から審査

CFIUSとは何か

– CFIUSとは何かCFIUSは、日本語では「対米外国投資委員会」と呼ばれる機関です。これは、アメリカ合衆国に対する海外からの投資について、安全保障上の観点から問題がないかを審査する役割を担っています。具体的には、外国企業によるアメリカ企業の合併や買収といった投資活動が、アメリカの安全保障に悪影響を及ぼす可能性がないかを調査します。もし、安全保障上の懸念があると判断された場合、CFIUSは投資案件に対して、条件を付与したり、大統領に投資の禁止を勧告したりする権限を持っています。CFIUSは、アメリカの法律である「エクソン・フロリオ修正条項」に基づいて設立されました。この委員会は、アメリカ合衆国財務長官を議長とし、財務省、司法省、国防総省、国土安全保障省など、複数の政府機関の代表者で構成されています。近年、中国企業によるアメリカ企業への投資が増加していることを背景に、CFIUSによる審査は厳格化される傾向にあります。特に、先端技術や軍事転用可能な技術に関わる企業への投資に対しては、CFIUSは特に慎重な姿勢を見せています。そのため、アメリカ企業への投資を検討する際には、CFIUSによる審査の可能性を考慮しておくことが重要です。

CFIUSの構成機関

アメリカ合衆国における外国企業による投資を審査する機関である、対米外国投資委員会（CFIUS）は、その名の通り、複数の政府機関の代表者によって構成されています。中心的な役割を担うのは財務省であり、委員長を務めます。これは、外国投資がアメリカ経済に与える影響を重視しているためです。

CFIUSには、財務省以外にも、アメリカの安全保障や経済に関わる重要な機関が委員として名を連ねています。例えば、テロ対策や国境警備を担う国土安全保障省、貿易政策を扱う商務省、国防を司る国防総省、外交を担う国務省、法の執行を担う司法省、エネルギー政策を扱うエネルギー省などです。

さらに、貿易交渉を担う通商代表部や、労働条件の整備などを担う労働省も参加しており、多岐にわたる分野からの視点を取り入れる体制が整えられています。

また、国家安全保障に関する情報を扱う国家情報局も委員として参加し、安全保障上の観点からの意見を述べます。

加えて、行政管理予算局、大統領経済諮問委員会、国家経済会議はオブザーバーとして参加しており、直接的な議決権は持たないものの、意見を述べることでCFIUSの判断に影響を与えることができます。

CFIUSの審査対象

アメリカの安全を守るため、外国企業からの投資を審査する機関である対米外国投資委員会（CFIUS）は、アメリカの企業に対する投資のうち、安全保障への影響を考慮し、審査を行う対象を決定しています。
特に、兵器や軍事技術に関わる企業、または、電力網や通信網といった社会の基盤となる重要なインフラに関わる企業への投資は、国の安全に直結する可能性があるため、厳しい審査が行われる傾向にあります。
近年、世界情勢の変化に伴い、経済的な安全確保の観点からも、審査対象が拡大しています。具体的には、人工知能や量子コンピューターといった将来を左右する可能性のある先端技術や、個人情報や企業秘密といった重要なデータに関わる企業への投資についても、国家安全保障への影響がないかを厳しく審査する動きが強まっています。

CFIUSの審査プロセス

外国企業によるアメリカ企業への投資に対して、安全保障上のリスクを評価する委員会、対米外国投資委員会、通称CFIUS。ここでは、CFIUSによる審査プロセスを見ていきましょう。CFIUSの審査は、まず投資を計画している外国企業がCFIUSに対して投資計画を提出するところから始まります。この提出された計画書には、投資の目的や対象となるアメリカ企業の情報などが詳細に記載されています。CFIUSは提出された情報を元に、まずは初期審査を行います。この初期審査では、主に過去に類似の案件で問題が無かったかどうか、また、明らかに安全保障上のリスクに該当しないかどうかが検討されます。そして、初期審査の結果、問題ないと判断されれば、速やかに承認が下り、外国企業は投資を実行することができるようになります。しかし、初期審査で安全保障上のリスクが懸念される場合は、より詳しい調査が必要となります。この詳しい調査には最大で45日間が費やされ、専門家チームによる綿密な情報収集や分析が行われます。そして、この詳しい調査の結果、問題ないと判断されれば、CFIUSは承認を出し、投資は実行に移されます。一方で、詳しい調査によってもなお懸念が解消されない場合は、最終的な判断が大統領に委ねられることになります。大統領は国家安全保障上の観点から総合的な判断を下し、承認するか却下するかを決定します。このように、CFIUSの審査プロセスは多岐に渡り、状況に応じて柔軟に対応できる体制が整えられています。

大統領の判断

アメリカ合衆国における海外からの投資は、安全保障上の観点から厳しく審査されます。特に、外国企業によるアメリカ企業への投資は、安全保障への影響について綿密な調査が行われます。この審査を行う機関が、対米外国投資委員会（CFIUS）です。CFIUSは、アメリカ合衆国財務省が主導し、複数の政府機関から構成される委員会です。

CFIUSによる審査を経て、なお懸念が残る案件については、最終的な判断は大統領に委ねられます。大統領は、アメリカの国家安全保障を最優先に考え、投資を承認するか、拒否するかを決定します。大統領の判断は最終的なものであり、覆されることはありません。過去には、中国企業によるアメリカ企業の買収が、安全保障上の懸念から大統領によって阻止されたケースも存在します。

このように、アメリカでは、国家安全保障を守るため、海外からの投資に対して厳格な審査体制を敷いています。大統領による最終判断は、その象徴と言えるでしょう。

CFIUSと日本企業

アメリカ合衆国に進出する海外企業にとって、CFIUS（外国投資委員会）による審査は避けて通れない重要なものです。CFIUSは、外国企業によるアメリカ企業の買収や投資が、アメリカの安全保障に影響を与える可能性があるかどうかを審査する機関です。近年、CFIUSによる審査は、以前にも増して厳格化しており、日本企業もその例外ではありません。

特に、人工知能や量子コンピューターといった先端技術分野や、医療情報や金融情報など、大量の個人情報を取り扱う事業を行う日本企業は、CFIUSの審査対象となる可能性が高くなっています。

アメリカへの投資を検討する際には、CFIUSによる審査の可能性と、その影響について十分に理解しておく必要があります。CFIUSの審査は、企業にとって大きな負担となる可能性があり、場合によっては、投資計画の見直しや、最悪の場合には投資の中止を余儀なくされることもあります。

アメリカへの投資を検討する際には、事前に弁護士やコンサルタントなどの専門家に相談し、CFIUSの審査について十分なアドバイスを受けることが重要です。専門家のサポートを受けることで、CFIUSの審査をスムーズに進めることができ、投資のリスクを最小限に抑えることが可能となります。